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ユーロ危機を理解するために!「ソロスの警告」

   

この本は、著名な投資家ジョージ・ソロスが通貨ユーロの構造的欠陥について講演などで語ったものを、1冊にまとめた本です。

その内容は、流動性の危機に対処する共通の中央銀行はあるが、支払い能力の危機に対処する共通の財務省はないという欠陥を主題にしたものです。

ユーロが世界経済を破壊する金融機関に勤めている方や、グローバル企業のヨーロッパ担当者の方は一度は目を通した方が多いのではないでしょうか?

完全な通貨には中央銀行だけでなく財務省も必要

金融システムが崩壊の危機にあるとき、中央銀行は流動性を提供できるが、支払い能力の問題には財務省しか対応できません。

 

ユーロ導入と危機の原因

ユーロが導入されると、ECB(ヨーロッパ中央銀行)はすべての参加国の国債を窓口貸出の担保として同じ条件で受け入れました。そのため各国の銀行は、数ベーシスポイントを余分に稼ぐために経済力の弱い参加国の国債を買いあさりました。

弱い国々の国債利回りが、強い国の国債利回りよりわずかに高かったからです。

経済格差が拡大

すべての参加国の国債が同等とみなされたことは、参加国の金利の収斂につながり、その結果、経済力格差が拡大しました。

再統一のコストに苦しんでいたドイツは、主に労働市場で構造改革を行いさらに競争力を高めました。そして、金利の低下という恩恵を受けた他の参加国は、住宅バブルにみまわれて競争力をさらに低下させました。

このため、競争力の低い国々の国債は無リスク資産から最も高いリスクの資産に変わり、これらハイリスクの国債を大量に抱えていた銀行は、その重みで押しつぶされそうになったのです。

 

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ギリシャ問題

ギリシャはユーロに参加するとき、虚偽の財政報告をしており、実際の財政赤字は報告されていた数字よりはるかに巨額でした。ギリシャ危機は、マーストリヒト条約の最も重大な欠陥をあらわにしました。

参加国には他の参加国に対する債務を強制的に返済させる仕組みもなければ、ユーロから離脱する仕組みもありません。しかも、参加国は紙幣を増刷する手段を使えません。

おまけに、ECBは銀行に融資しますが、参加国に融資することは規則で禁じられています。そのため、ギリシャを支援する役目は他の参加国が担うことになったのです。

目に見えない巨額の損失を抱える

しかし、ドイツは不良債務を抱えた国々の財布にはなりたくないのです。そのため、ユーロ圏諸国の対応は常に「少なすぎる、遅すぎる」ものとなり、ギリシャ危機はどんどん深刻化しました。

そして、イタリアやスペインなど他の重債務国の国債の金利が上昇しました。ユーロ圏の銀行は、バランスシートには現れない巨額の損失を抱えることになりました。

強いドイツが状況をさにら悪化へと

ドイツはギリシャに対して厳しい条件を課し、ドイツや他のユーロ圏諸国が提供する救済融資に対してギリシャに懲罰的金利を要求することで、状況を悪化させました。

ギリシャ経済は崩壊し、資本が逃避して、ギリシャは救済パッケージの条件を満たすことに繰り返し失敗し、やがてギリシャは明らかに支払い不能となりました

 

ドイツ

欧州において危機が発生したときは債権者が主導権を握るので、ユーロ圏の金融政策や経済政策を決めるのはドイツです。この問題点は、ドイツが他国に押し付けたがっている政府支出の削減が、ユーロ圏諸国を債務とデフレの悪循環に陥れることです。

財政赤字の削減は、賃金と企業収益の両方に下方圧力をかけ、経済は収縮し、各国の税収は低下します。

その結果、債務負担、すなわちGDPに対する政府債務残高の比率はかえって上昇し、さらなる赤字削減が必要になり、悪循環が始まるのです。

 

ユーロ危機

ユーロ危機は、一般に通貨危機とみなされていますが、政府債務危機でもあるし、それ以上に銀行危機でもあります。

ユーロ危機への解決策は、事実上ドイツによって決定されることになりますが、ドイツはこの危機を、競争力を失って債務を積み上げた国々の責任とみなしており、そのための調整の負担を債務国に負わせようとしています。

しかし、無秩序なデフォルトやユーロ圏離脱は、ギリシャのような小国の場合でも、大恐慌に匹敵する銀行危機を引き起こすでしょう。

 

ユーロ危機に対する解決策

まず債務国に厳しい財政規律を課すとともに構造改革を促さなければなりませんが、その後で、債務とデフレの悪循環から抜け出すためになんらかの景気刺激策をとらなければなりません。構造改革だけでは景気を浮揚させることはできないためです。

景気刺激策はEU全体で実施する必要があり、EU加盟国が連帯して保証する必要があります。

 

この本は2012年初頭に出版されました。

当時よりも現在の方が、ユーロ危機に対する対処策は整備されつつあります。しかし、ユーロ圏共通の財務省は存在しませんし、ドイツの緊縮策重視という政策にも変化はありません。ソロスが指し示した解決策は、現在もなお有効といえると思うのです。

 - 国際政治・経済 ,

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