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今改めて敗戦を経済面から振り返る「日本経済を殲滅せよ」

   

本書は、真珠湾攻撃より前の時点における、アメリカの対日金融・経済封鎖をメインテーマにしています。これまでは軍部の独走という面から日本の敗戦が語られることが多かったわけですが、本書では経済・金融面から「日本敗戦」を見つめていきます。

戦争経験者が減ってきている今日、日本の政策決定に携わる国家公務員の方や、自衛隊関係者、国会議員とその秘書の方は改めて「日本敗戦」を見つめていただきたいと思います。

アメリカの対日観

真珠湾攻撃の35年前から、アメリカは日本の経済・金融の基盤が脆いことを見抜いていました。1905年、日本が日露戦争で勝利すると、アメリカのセオドア・ローズヴェルト大統領は、日本がアメリカの「門戸開放政策」を踏みにじって中国支配に向かうのではないかと懸念を深めていました。

アメリカの「門戸開放政策」は、中国の主権尊重と自由貿易を列強諸国に求めた政策でしたが、日本にとっては、この政策やフィリピンとハワイに置かれた米軍基地が、日本の帝国建設を阻む壁と考えていると想像されていました。

そこで、ローズヴェルトは、必要とあらば、日本と戦端を開くことを想定した計画を立案するよう海軍に指示したのです。

 

日本の無力化

1930年代、それまで穏健な国際主義者が率いていた日本政府は、軍部支配の政権に取って代わられました。そして、日本によるアメリカの「門戸開放政策」への侵害は、中国侵略、さらには西側諸国の植民地に対する野心という形で展開していきました。

しかし、日本を経済と金融の両面で孤立させれば日本が無力化することは、アメリカ政府がまだ参戦を避けていた時点から明白となっていたのです。

そして、日本による侵略を阻止するというアメリカの国家政策が定着した頃、アメリカは日本を締めあげるために艦船や爆弾といった手段とは別に、次第に自らの巨大な経済と金融のパワーを行使するようになっていったのです。

 

アメリカの軍事計画

アメリカの軍事計画の立案者たちは、日本側の戦争目的は限定的なものにすぎず、アメリカに奇襲攻撃を仕掛けて海戦に勝利し、この結果を受けて和平交渉に入り、東アジアでの支配的立場を一部譲り渡して決着させるという程度のものと見通していました。

一方、アメリカの目的は異なっていました。アメリカの目的は、敵国の徹底的な殲滅でした。彼らは、日本が自然資源の乏しい島国であり、海外貿易が断たれれば、戦争の遂行どころか、経済生活自体が立ち行かなくなることも心得ていました。

 

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日本への包囲戦略

大日本帝国は、国民を養うだけなら十分な食糧を生産できていましたが、工業化を進め、植民地の拡大を図るには大量の金属と燃料が必要でした。こうした状況から、アメリカの計画立案者たちが立てた戦略は、包囲戦略でした。

アメリカは軍事的には当初はいくらかの打撃を被るものの、やがて日本に対する反撃を開始して島々を奪還し、日本の艦隊を撃沈して日本周辺の基地を占領し、さらには日本の生命線たる輸入物資を枯渇させ、ついには日本を降伏へと追い込む戦略でした。

 

金融面での日本包囲

日本を金融面で締め上げるには、日露戦争の際には日本に資金を融通したウォール街だけではなく、世界中の資金提供者に対して、日本への融資を拒否させる「強制的圧力」を加えればよかったのです。

 

日本の弱点―石油

日本経済と、日本の陸海軍にとって、石油ほど大きな弱点となっていた物資はほかにありません。アメリカ政府は、自国が供給する石油がかけがえのない存在であることを十二分に心得ていました。石油の蛇口を閉じれば、日本は必然的に外交方針を転換せざるを得なくなります。

日本政府にとっては、緊張状態を外交的に解決するのか、あるいは、石油備蓄が尽きて戦争遂行が不可能となる前に、一気に戦争に打って出るか、その二者択一の判断となったのです。

 

最後の日々

1941年7月、日本が南部フランス領インドシナ進駐を決定した直後、ついにアメリカは在米日本資産の凍結措置に踏み切りました。これにイギリス、オランダも同調し、それまで日本が戦費用に着々と貯め込んできた在外ドル資産は使用不能となり、すでにアメリカから輸出許可を得ていた輸出についても、代金の支払いがままならなくなりました。

すでにブロック経済下に入っていた世界では、事実上、日本の決済手段はドルのみとなるなかで、手持ちの金をアメリカ財務省に売却してドルを得るという方法も封じられ、もはや軍需物資を貿易で手に入れる道はふさがれたのです。これに石油の全面禁輸が追い打ちをかけ、ついに日本は真珠湾攻撃へ向かいました。

 

本書を読むと、当時の日本陸軍が日本の国力をいかに過信していたかが読みとれます。「日本の敗戦」とは、国力を構成する要素を把握していない人物たちが国家の指導的立場にたつと、簡単に国を滅ぼしてしまうという典型的な事例でしょう。

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