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日本の戦前からの歩みをどう語るのか「岸信介の回想」

   

この本は、1980年頃に雑誌「中央公論」の企画で実施された岸信介元首相へのインタビュー記事をまとめたものです。

岸氏と親しかった政界のフィクサー、矢次一夫氏との鼎談という形で中央公論に連載されました。

太平洋戦争の戦前から戦後にかけての日本の置かれた立場に関心を持つ有権者のみなさん、このインタビューを読んで何か感じるものはありましたか?

昭和天皇の見識

満州事変が起こったときの昭和天皇の立腹は大変なものでした。なかでも張作霖を爆破した関東軍のやり方について、ときの田中義一総理が昭和天皇のところへ報告に行ったとき、昭和天皇はこのように話をされました。

要するに国というものは、具体的に信頼も必要だし権威も必要だ。しかし、権威も信頼も両方守ることができないような事態が発生したときは信頼を失うべきではない。信頼さえ、国際的に確立しておれば、権威はいつの日にか回復することができる

これは、名言だと思います。実に驚くべき聡明であり、達見な君主だと思います。

 

東條内閣を倒す

商工大臣を務めていた私(岸氏)が東條総理と最終的に意見が合わなくなった理由は、戦争でサイパンを失ったら日本はもう戦争を継続できない、という私の意見に対して、東條総理は反対で、そういうことは参謀本部が考えることで、お前みたいな文官に何がわかるかという姿勢でした。

しかし、実際にサイパンが陥落したあとでは、B29が日本本土へ頻繁に爆撃を行うようになり、軍需生産が計画通りにできなくなりました。ですから、できるだけ早く終戦する以外に道はないと思いましたが、軍は沖縄決戦まで持って行ってしまうわけです。

東條総理は、私に商工大臣を辞めるように言ってきましたが私は拒絶しました。

当時の総理大臣には閣僚を罷免する権限がありませんから、私の辞職拒否をきっかけに内閣不一致という形に持ち込んで東條内閣総辞職へとつなげていったのです。

 

戦犯容疑者として

我々は戦犯容疑者として指名されました。

巣鴨に移送される前に収容されていた大森収容所では、外部との連絡は断ち切られていましたが、内部での話し合いはまったく自由でした。そこで、東條元総理や鈴木貞一氏などと集まって、検事からの取り調べや裁判へどのように対応するかを毎日打ち合わせしました。

とくに、昭和天皇の問題が重要でした。仮に、東條元総理が自殺をしてしまうと昭和天皇に累が及ぶことになります。どんなに苦しくても我々は生きて、裁判でこの開戦が昭和天皇に責任がないのだということをはっきり解明させなければいかんという気持ちでした。

 

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巣鴨プリズンでの東條英樹

1946年4月、巣鴨プリズンのなかで起訴された者と、起訴されなかった者とで分けられ、話もできなくなりました。

それからある日、起訴された連中が散歩している姿を、我々が窓から覗いて見ていました。そのとき、東條元総理の後ろ姿が非常に良いという意見で一致しました。

人間的に非常に良いと思ったのです。総理大臣時代のような、イライラした印象が消えていて、もう自分自身で死を決した人間の姿だ、そう思えたのです。

 

吉田茂は憲法改正を主張していた

1948年12月、東條さんたちが処刑された翌日、我々起訴されなかった者たちは巣鴨から釈放されました。そして、その5年後、吉田茂率いる自由党から衆議院選挙に出馬し、政界に復帰しました。

選挙に当選したあと、吉田茂に呼ばれて、自由党の憲法調査会長を命じられました。そのとき吉田さんは「俺はいまの憲法は気に入らないが、あれを呑むより仕方がなかった。日本国憲法をよく研究して、改正しなければいかん」と言いました。

その頃、吉田さんはマッカーサーの後任のリッジウェイ将軍に憲法改正の話を持ちかけたのですが、サンフランシスコ講和条約が成立したあとに実施したらどうかとリッジウェイ将軍から言われたため、そのときは憲法改正に着手しなかったのです。

 

台湾への恩義

1957年、総理大臣に就任してから、台湾(中華民国)を訪問しました。

そのとき、初めて蒋介石総統に会いました。戦争終結に際して、蒋介石は台湾に残った日本人約200万人を無事に日本に帰国させてくれました。そして、連合軍が日本を分割占領することに反対したため、ソ連が北海道を占領するという事態も回避されました。また、戦後、台湾は日本への賠償請求権を放棄してくれました。

こういった蒋介石の姿勢に応えるため、日本はある程度の犠牲を払ってでも台湾の恩義に報いる必要があると考えています。

 

本書では、戦前からの歩みについて岸氏本人の口から語られています。

現代の有権者のほとんどが、現在の政治情勢や国際情勢が、どのような経緯で形成されてきたかを知りません。しかし、本書を読むことによって、歴史的経緯の断片を知ることができるのです。

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